選挙が近づくと、私は立候補者の「声と話しかた」に注意を払い、評価の重要なポイ
ントとしています。占いとか、手相には全く興味がないのですが、ひそかに声相判断で
は超能力があるのでは・・・と自負しているのです。

　たとえば、私たちに身近な某首相などは、あの耳を蔽いたいほどの声に、彼の人格が
歴然としており、彼が首相になってからの社会状況の変化は、あの悪声と決して無縁で
はない・・・などと。

　人間の心の尊さと美しさを端的に表現する合唱が、現在の日本、就中(なかんづく）、
大都会で、ともすれば衰退の傾向を見せようとしているのを、止むを得まいという人も
ありましょう。

　しかし、コダイがミサ・プレビスを書いたのは、戦争で廃虚となった1945年のブダペ
ストだったのです。この深い人類愛と平和への祈りに溢れた感動的な名作を再現するの
に、アルベルネの状況はいささか不本意、不充分といわざるを得ませんが、幸い、歌曲
と宗教作品に関して最高の識見と練達の手腕をもつ川口耕平さん、塚田佳男さんの協力
が得られました。

　世相を変えるカをアルベルネに望むわけにはいきませんが、声相の上からいっても比
類のないテノール鈴木寛一さんを通して、ベル・カント（美しい歌）の真髄を味わい、
人間の、そして生きることの尊さへと思いを走らせてみたいのです。